MapleSim 5 の新機能
MapleSim 5 では、記号モデリングや実時間シミュレーション、構想段階から組み立てまで設計プロセスのあらゆる側面における複雑な 3 次元マルチボディ構造の計算・理解、モデルのプレイバックやエクスポート等の分野で利用できる機能が一段と強化されています。MapleSim 5 を使えば、モデル構築・シミュレーション・解析・表示の機能強化により、従来よりも簡単かつ迅速にシナリオをテストしたり計算結果を得ることができ、複雑さを効率よく管理できます。強化された機能には次のものがあります。
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2-D および 3-D モデルの構築中に、モデルの設計と構造を検証・トラブルシューティングするため実時間診断機能を強化
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サブシステムにおけるパラメータ・変数管理の効率向上
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様々なパラメータセットを保存・再利用・比較するためモデル管理を強化
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同位置に配された多体コンポーネントの内部コンポーネントの選択・特定がより簡単に
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ソルバ・マルチボディ・表示の設定変更をより簡単にするため Parameters Pane (パラメータペイン) を再編。
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MapleSim を持っていないユーザと共有するため、録画した 3-D シミュレーションを .mpeg ファイルとしてエクスポート
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コード生成は、MapleSim でモデル化されたシステムすべて(ハイブリッドシステムを含む)に対応
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生成されるスタンドアローン C コードに、固定幅ソルバを追加
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自作の解析ワークシートを簡単に構築できるよう、API を一新
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コンポーネントライブラリの強化
コンポーネントライブラリ が大幅に強化され 、モデルのためにより適切なコンポーネントが選択できるようになりました。MapleSim 5 では、アプリケーションの特殊な要求に対し、予め準備されている特殊ライブラリ・コンポーネントを選択することで、複雑なモデルをより速く構築し、微調整することができます。MapleSim コンポーネントライブラリ には 150 を超える新コンポーネントが加わり、様々な技術分野のサンプルモデルを使用・観察し、シミュレーションに適用することができます。このライブラリを用いれば、信号ブロックコンポーネントや、電気・機械・熱分野のコンポーネントを駆使した、複雑かつ完全なマルチドメイン・シミュレーションを構築することができます。
詳細は MapleSim 5 コンポーネントライブラリ新機能 をご覧ください。
インスペクタ・タブと設定タブのナビゲーションの改良
インスペクタ・タブは、各セクションを別個のグループに分けることで、パラメータ、詳細パラメータ、変数のそれぞれの設定に簡単にアクセスでるようにします。各セクションは最小化することで、長いリストを扱わなくてもモデル管理、値の閲覧、名前とパラメータ値の変更、シミュレーションオプションの指定、値のプローブ等を行うことができます。
設定タブを使えば、ソルバ、マルチボディ、3-D 構造の各設定をモデル階層のどこからでも簡単にアクセスできます。各セクションを最小化できるので、様々な設定に素早くアクセスし、ソルバ、シミュレーションエンジン、3D ワークスペースに対するプロジェクト要件管理、シミュレーションや表示に関する値の確認、シミュレーションオプションの指定がやりやすくなります。
詳細は MapleSim User's Guide の 第 1 章 MapleSim ウィンドウ をご覧ください。
ピックリストによる 3-D モデルのコンポーネント選択機能の改良
MapleSim 5 で 3-D モデルを構築するとき、同位置に配置された二つ以上のマルチボディコンポーネントから所望のコンポーネントを簡単に選択・閲覧・特定することができます。そして該当するコンポーネントを選択し、インスペクタタブまたはモデルツリーパレットからそのサブシステムの名前とパラメータを見ることができます。モデルワークスペース・ビューと 3-D ワークスペース・ビューの両方を同時使用している場合、モデルワークスペース内で該当するコンポーネントまたはサブシステムがハイライトされます。
ピックリスト は、3-D モデルから特定のコンポーネントを簡単に見つけ出し、分離し、検証のためにそのコンポーネントの初期条件を設定することを可能にします。この機能を用いれば、関節に直接行って初期条件を変更することができます。コンポーネントを再度取り付けると、MapleSim 5 はシステムの初期条件をすべて自動的に更新します。
詳細は 3-D モデルにおけるオブジェクトの特定.
「選択範囲に合わせる」による 3-D 表示の改良
3-D 表示では、マルチボディコンポーネントを選択し、「選択範囲に合わせる」の機能を用いて選択されたマルチボディ・コンポーネントが表示されるように表示領域を移動することができます。これは、ひとつひとつのコンポーネントが分かりにくい複雑なモデルの場合特に有用です。「選択範囲に合わせる」は、2-D の図面のコンポーネントに対する 3-D 図を見つけるときに便利です。この機能は一つのコンポーネントでも複数のコンポーネントでも利用できます。
詳細は 3-D ワークスペース内でコンポーネントをセンタリングする をご覧ください。
新しい API (アプリケーションプログラミングインタフェース)
MapleSim 5 で提供されている新しい API を用いると、MapleSim の全機能のほか、モデルからシステム方程式など様々な情報を自動抽出できる強力な内蔵解析テンプレートを Maple から利用できます。この新 API の各コマンドは、MapleSim のあらゆるモデルとのやり取り、パラメータや方程式の抽出、モデルの初期化、シミュレーションの実行、そのほかにも様々な操作を簡単にするカスタム解析テンプレートを作成するための、強力なツール一式を提供します。これで、Maple の機能を最大限に引き出し MapleSim モデルを即座に解析できます。
詳細は、MapleSim API 概要 をご覧ください。
3-D モデルワークスペースのカスタムグリッド設定の拡張
3-D モデルの相対的な大きさや位置にあわせ、グリッド線のサイズと間隔をカスタム化できます。3-D カスタムグリッドを用いると、透視図のグリッドの大きさと間隔を指定できます。正投影図のグリッドは長さが無限大になり、必ず視野の全域にわたるようになりました。
詳細は 3-D モデルワークスペースのグリッドをカスタム設定する をご覧ください。
よりインタラクティブな 3-D 表示
3-D ワークスペースでは、ズームツールを用いて 3-D ワークスペース領域を選択し、カーソルの位置に対し前(ズームイン)後(ズームアウト)することでモデルをあらゆる方向から見ることができます。
詳細は 3-D モデルのズームイン・ズームアウト をご覧ください。
並進・回転のスナップの改良
3-D ワークスペース でコンポーネントを並進・回転させた場合、3 次元空間に予め設定されたグリッドの格子点上に配置されます。
詳細は 3-D ワークスペースのスナッピング オプションを変更する をご覧ください。
視点移行アニメーション
視点が変わるとき、視界の変遷が滑らかなアニメーションとして表示されるので、3 次元空間での方向感覚を保つことができます。
詳細は 視点移行アニメーションを有効にする をご覧ください。
小画面表示の改良
小画面で見易くするため、3-D ツールバー の一部のツールは非表示となっています。MapleSim 5 では小画面でも見易くするため、3-D ツールバー の使用頻度が高いボタン類を表示できるよう、ツールバー領域の大きさの変化に応じて使用頻度の低い一部ツールを自動的に切り詰めます。
詳細は 参考: メイン 3-D ツールバー をご覧ください。
動画のエクスポート
動画エクスポート機能を用いると、録画したシミュレーションを .mpeg ファイルとしてエクスポートすることが出来ます。再生時間を指定することで、必要に応じシミュレーション全体を加速・短縮することができます。
詳細は 動画のエクスポート をご覧ください。
診断機能の強化
MapleSim 5 では、モデルのテストやトラブルシューティングを行う手段を提供します。これは、モデル構築中に 2-D や 3-D のシミュレーションに対するフィードバックを与え、設計・構築の正しさを確認できるようにするものです。構築したモデルをテストすれば、構築上の誤りを見つけることができます。シミュレーションを実行すればインターフェースやシミュレーションの誤りを見つけることができます。モデルを構築している間、警告やエラーメッセージが、その所在サブシステムと併せてデバッグ枠に表示されます。
詳細は 診断機能の利用 をご覧ください。
パラメータ枠の操作性改良
MapleSim のパラメータ枠の操作性が全般的に改良されました。サブシステム内のどのレベルからでもシミュレーションや表示の設定にアクセスできるので、3-D モデルの動作を様々な条件下で確認し、視覚的に解析することができます。
詳細は、MapleSim User's Guide の 第 2 章: モデルの構築 をご覧ください。
新しい「パラメータセット」機能をシミュレーションで利用
MapleSim 5 では、保存したパラメータ値を用いて多くのシミュレーションを実行することができます。同じモデルに対し異なるパラメータ値のセットを保存・再利用・比較することができ、様々なシミュレーションを適用・実行し、その都度新しい値を保存することができます。保存されたパラメータの管理のため、ユーザーインターフェースには、プロジェクトタブに強化されたパラメータセットパレットが加わったほか、インスペクタタブも加わりました。現在のパラメータをセットに保存したり、パラメータセットを消去・名前変更できるほか、パラメータセットを次回シミュレーションに使用できます。また、二つのパラメータセットを比較したり、パラメータセットを現在使用中のパラメータと比較できます。
詳細は パラメータセット をご覧ください。
パラメータ詳細と変数設定
モデルを構築する際、より柔軟にサブシステムを操作し、そのモデルが管理不能に陥ることを防止できるようになりました。パラメータ詳細と変数設定を利用すれば、共有されたサブシステムのコピー全てに影響する変数・パラメータを変更することなく、サブシステムのコピーひとつを変更することができます。サブシステムのパラメータ・変数・初期条件を、サブシステムのコンポーネントに直接割り当て、同一のモデルに対し様々な初期条件を利用できるようになりました。既存の値をオーバーライドし、それをさらに「パラメータ化」機能を用いてパラメータに変更することができます。すると、そのパラメータに対する変更はデフォルトとして共有サブシステムの全コピーに反映されることになります。また、そのパラメータ化を元に戻すことも簡単です。
詳細は パラメータ詳細と変数設定の使い方 をご覧ください。
クラッチ・キー
新しいキーボードショートカットにより、3-D でコンポーネントを素早く接続できるようになりました。
詳細は 3-D ワークスペースでのオブジェクト接続 をご覧ください。
接続の再結線機能の改良
MapleSim 5 では、自動的かつ効率的に図中の全ての接続を最も簡単な形に再結線する方法を提供します。使用中の図における全接続、または選択された接続が自動的に再結線されます。再結線は、Edit メニューまたは 状況依存メニューから選択でき、複数回選択するとそのたびに接続が整理されます。MapleSim 5 では、選択された結線の順番に「感受性付与」をしますが、それには大局的な方法ではなく局所的な最適化手法を用います。
詳細は 接続の再結線 をご覧ください。
ポートラベル添付機能の強化
表示を簡単にするため、ポートラベルは自動的に拡大・縮小でき、均等に配置され、モデル構築中いつでも有効にできるようになりました。新しいサブシステムを作成するとき、ポートに自動的にラベルが添付されます。Edit メニューまたは状況依存メニューのポートラベルの表示を選択する事で、ラベルを非表示(あるいは古いサブシステムの場合非表示)にすることができます。
新しいサブシステム視覚マーカとオーバーライド
サブシステムマーカ表示 は、サブシステムを特定し、多数のサブシステムを整理・グループ分けするための新機能です。新しいサブシステムを作成するとき、表示メニューのサブシステムマーカ表示でそのステータスをオンかオフに設定できます。サブシステムボックス右下の「手」は共有サブシステムであることを示し、右上の矢印は、サブシステムコンポーネント内にパラメータや IC 設定のほかオーバーライド(変更)があることを示します。
Modelica インポートと Modelica 3.1 サポートの強化
MapleSim 5 では、Modelica からのインポートが大幅に高速化されています。
MapleSim の全モデルでコード生成機能を提供
MapleSim の全モデルで最適化コード生成が利用可能になりました。離散事象を有する連続系に対応できるようコード生成ツールを拡張したことで、MapleSim は、あらゆる MapleSim モデルのシミュレーションを行う効率よい C コードを生成できるようになりました。このように作成したコードは、他のプログラミングツールで取り込むことができます。
磁気系の新計算例: 飽和インダクタと可動コイルアクチュエータ
飽和インダクタモデルは、インダクタ内の軟らかい磁性材料の非線形磁化特性を表します。可動コイルアクチュエータモデルは、軸対称なコイルアクチュエータの磁力成分がフランジに及ぼす影響を表します。これらの計算例は、MapleSim ライブラリ計算例磁気系パレットに入っています。
熱系の新計算例: ポンプと弁を用いた冷却と間接冷却
ポンプと弁を用いた冷却モデルは、加熱されたサーマルマスに対する、液体冷媒を用いたヒートシンクによる冷却効果を表します。間接冷却モデルは、再循環する冷媒と、外部冷却ループに接続したラジエータとの間の伝熱現象を表します。これらの計算例は、MapleSim ライブラリ計算例熱系パレットに入っています。
ルックアップテーブルのインポート
ルックアップテーブルのインポート機能が強化され、スプレッドシートデータをインポートする際に表題の行を飛ばして読み込むことが可能になりました。第 1 行からデータが入っていなくても大丈夫です。同様に、内挿テーブルとして表題付きのデータセットを作成することもできるようになりました。
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